インフレになった場合若者がもらえる実質年金受給額はどうなる?
厚生労働省は公的年金支給額を抑えるマクロ経済スライドを2019年度に発動することを発表しました。マクロ経済スライドとは少子高齢化で年々重くなる現役世代の負担を高齢者にも負担してもらうべく設定された制度です。年金の受給額は物価上昇率や賃金上昇率などから改定する決まりとなっており,受給額の上昇を物価上昇率よりも抑えることで実質的な支給額を下げる制度になります。年金
ただし,年金の額面価格を今よりも下げることはしないルールとなっているためほとんどインフレが進んでいない現状では2019年の発動が2回目になります。今回のケースでは夫婦2人のモデル世帯で月額227円増の22万1504円となりインフレを加味すると0.5%分の月額1,135円減額された計算になります。
今20歳の人がもらえる年金額はどこまで目減りしうるか
2019年現在の夫婦2人で22万という額であれば貯蓄もある程度あればそれなりに満足のいく生活ができるでしょう。さてこのまま愚直にマクロ経済スライドが発動された場合どのくらい実質的に年金額が目減りしてしまう可能性があるのか計算してみました。ケースとしては,①インフレ率が年率1.0%、②インフレ率が年率2.0%の場合です。インフレはするけれども年金支給額は増加しないという場合を想定した場合,①インフレ率1.0%の場合今20歳の人がもらえる年金は現在の価値で14万8000円、②インフレ率2.0%の場合なんと現在の価値で9.5万円となり半額以下となります。
実際インフレが起きた場合それを加味した減額となるため少し極端かもしれませんが,現に人口が自然現象しはじめており現役世代がどんどん減る日本では実質的に相当減額しないと制度崩壊しかねないのも事実でありありうる現実の一つとして考えおく必要はあるかと思います。
実際は日本のインフレ率は低い
一方でここ20年のインフレ率は0.1%とほぼインフレしていない状況です。黒田日銀総裁はインフレ率2.0%を目標に量的緩和政策をとっています。マクロ経済の理論的には,マネタリーベースが増えればインフレが進むはずですがマネタリーベースが2倍になっても全然インフレが進まない日本はマクロ経済学でも説明できないものすごいインフレ嫌いな国です。
さて,このままインフレが進まなければ年金支給額の額面価格を下げられないという現行制度に従えば年金支給額は減らないです。
ではそれならばみんな幸せなのかといえば決してそうではないです。アメリカでは過去20年の平均で年率2.2%でインフレしており今後もおそらくそのようなトレンドとなるでしょう。日本が30年間全くインフレせずにアメリカは2%でインフレした場合30年後に1.8倍の購買力の差が生まれます。為替が一定(1ドル110円)の場合アメリカの製品を買おうとした場合今よりも1.8倍の日本円が必要です。例えばiPhone XR(256GB)は現在約11万円ですが30年後には20万円になっているかもしれません。また,原油は現在ドルベースで取引されているのでガソリン価格も1.8倍になります。燃料は全ての製品を作るうえで使用するのでやはり全ての物の値段は上がります。
このような形でもインフレはインフレですが国民の生活上全くいいことはないのでこのようなインフレは「悪いインフレ」として認識されています。ニュースでインフレ関係の報道を見る時には注意が必要です。例えば物価指標として食品とエネルギーを除いた指標であるコアコアCPIなんかの数字を見るべきです。
では為替が1.8倍円高(1ドル=61円)になればいいのかというとそれでもだめです。日本はトヨタなどの輸出企業を中心に産業が回っているので円高では海外製品と比較して割高になるため全く立ち行かなくなります。過去民主党政権下では1ドル=80円台だったころ多くの企業が苦戦していたのは記憶に新しくましてや1ドル=61円なんてなった場合トヨタをはじめとした多くの企業が倒産して産業は崩壊するでしょう。
こういった問題を回避するためにインフレ率がアメリカ並みの2%になるように目指しているわけですが,もう実質的に打つ手はなくほぼお手上げ状態です。日本は平成30年間にわたりデフレ状態だったのでマネタリーベースを改善したところですぐに成果は出ないのかもしれません。今後正社員でもベースアップ等が進み国民の消費意欲が戻ってそれにともない企業も内部留保を吐き出して経済が回りだすのに期待するしかありません。
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