ジェレミー・シーゲル著「株式投資の未来」要約【第一章:成長の罠】

株式投資の未来要約【第一章:成長の罠】

米国株投資をするならジェレミー・シーゲルの「株式投資の未来」は出来れば読んでおいた方がいいです。とはいえ,全293ページある上、内容も経済とか経理的なことが好きでないとちょっと難解で読みづらいかもということで内容について少しずつ要約したいと思います。

今回は【第一章:成長の罠】についてです。第一章ですが,とても重要なことが書いてあり,基本的に本書の主張の多くは第一章に集約されています。

成長目まぐるしいGAFAに投資すべきか,ぱっとしない高配当銘柄に投資すべきか

株式投資をする際にまず魅力的に映るのはやはり技術革新が日進月歩で進んでいて,今を時めく企業です。今でいえばGAFA(google, amazon, facebook, apple)でしょう。とはいえ,本当にこれらの企業に投資することが投資家にとって最適なのでしょうか?

こういった疑問を定量的に分析するため,【第一章:成長の罠】では過去(1950年~2003年)成長目まぐるしい企業だったIBMとオールド・エコノミーの代表格であったスタンダード・オイル・オブ・ニュージャージー(現エクソンモービル)を比較例として出して論じています

もし,1950年にタイムマシーンで戻れるとして,IBMとスタンダード・オイルのどちらかに投資するとしたら,どちらがリターンが高かったでしょう。投資の条件としては一回投資したら一切銘柄の移動はせず,受取配当金も同銘柄に再投資するという条件です。投資期間は1950年~2003年のおよそ50年間です。

ちなみに,1950年当時はハイテク企業の急成長がまさに今始めるところという時期であり,1950年の米国の家庭のテレビ台数が440万台だったのにたいして2年後の1952年のそれは5000万台とじつに10倍以上に伸びています。

また,企業の成績としてよく用いられる1株あたり売上高や1株当たり利益,セクター成長率は下表のようになっており,IBMの方が,スタンダード・オイルを圧倒しています。この数字だけを見たら確実にIBMに投資していたほうがよさそうです。セクター成長率なんかスタンダード・オイル(エネルギーセクター)はマイナス成長となっています。

この数字を見る限りでは明らかにIBMに投資したほうがよさそうです。しかし結果は違っており,1950年から2003年までについて,IBMを保有することを選んだ場合の平均年間リターンは13.83%だったのに対して,スタンダード・オイルを保有することを選んだ場合の平均年間リターンは14.42%でスタンダード・オイルの方がIBMよりも高いリターンをもたらしました。わずかな差に見えますが,IBMに投資していた場合は50年間で96.1倍になったのに対して,スタンダード・オイルに投資していた場合は50年間で126倍になっていたことになるので,差は大きいです。

差は大きいですが,IBMに投資していた場合も十分すぎる以上のリターンをもたらしており,やはり株式投資すべきと言えるでしょう。

なぜこの差が生まれたかというと,IBMはその人気のため,値段が高すぎたためです。平均株価収益率はIBMが26.8だったのに対して,スタンダード・オイルは13.0と実に倍,平均配当利回りはIBMが2.2%に対して,スタンダード・オイルは5.2%でした。

冒頭の投資の条件である,「配当金は再投資にまわす」という条件と配当利回りの差により,保有株式数に大きな差が出ています。IBMの場合,配当金を全額再投資に回しても保有株式数は50年間で3倍程度しか増えませんが,スタンダード・オイルの場合15倍にもなっています。

投資家に不人気だが,着実に配当金というキャッシュを投資家にもたらしてくれる企業,例えばコカ・コーラやアルトリアグループ等の株を買い,長期保有・配当再投資したほうが,今をときめく成長企業に投資するよりも長い目で見たら投資家に与えるリターンは大きくなることがデータで示されました。株式投資の未来によると,同期間でコカ・コーラの平均年間リターンは14.3%,アルトリアグループの平均年間リターンは15.2%となっており,IBM以上となっています。

また,この例はIBMとスタンダード・オイル等の比較だけではもちろんなくて,米国主要500社について,高配当銘柄と500社の平均のリターンを調査したところ,高配当銘柄の方が500社平均よりも年率平均で3.1%、1.28倍のリターンをもたらすことが分かっています。

定期的な配当収入+市場平均に勝てる可能性もあり 株式投資においては十分に分散された米国株式,例えばS&P500に連動するETFであるVOO...

つまり,あくまで過去のデータ(とはいえ50年間,何百社という十分長くN数も多いデータ)をひも解く限りにおいて,高配当銘柄を長期に保有して配当金をコツコツ再投資することでアメリカの市場平均というどんな優秀なファンドマネージャーでも長期に勝つことが難しいと言われている指標よりも高いリターンを得られる可能性があるということです。これはかなり画期的な主張です。なぜならば,アメリカの市場平均であるS&P500に投資することは株式投資の最適解とされており,ウォーレンバフェットもS&P500に投資すべきと言っているからです。

いわば世間の常識を覆すことをきちんとデータに基づいて分析しているという点でこの第一章の【成長の罠】というのは非常に画期的な発見と言えるでしょう。

また,私的な感想ですが,はっきり言って,IBMでもスタンダード・オイルでもリターンとしては十分すぎると思います。50年間でスタンダード・オイルが126倍になっていたことが後から分かっている状況だったとしてもIBMに投資していて96倍になったことをがっかりする人は多くないと思います。とはいえ,スタンダード・オイルに投資していた場合毎年平均利回りで5.2%の配当金が支払われており,さらに市場平均に勝てるかもしれないということを考えるとスタンダード・オイルに投資するのは非常に魅力的です。

なぜなら,配当金という目に見えるキャッシュを受け取れるというのは数字以上の精神安定効果があると思っています。たとえその額が少なかったとしても効果はあることを実際私は大きく感じています。そして,受取配当金が多い方がその精神安定効果は当然高まります。そういう意味でも高配当銘柄に投資するのは非常に意義があり,さらに市場平均に勝てるかもしれないのならばなおのことです。

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