お金では人の命は買えない?
お金で買えないものの代名詞として人の心と命がよく例に挙がります。確かに特定の人の場合そうでしょうが,マクロ経済的に考えた場合少し話は変わってくるかもしれません。例えば日本では失業率と自殺する人の数には明らかな相関関係がみられます。
失業すると生活費に困るので自殺に走ってしまう人がいることは感覚的にも分からないことはないのでこの相関関係は正しいと言えるでしょう。
インフレと失業率の関係を表したフィリップ曲線でお金で人の命が救える?
失業率を抑えることができれば自殺者の数を減らせる可能性があることは分かりましたが,では失業率はどのようにしたら減るでしょうか?
今は有効求人倍率が非常に高く,失業率も2%台とバブル期並みに低い水準です。しかしそれは好景気の恩恵によるもので永続性はありません。アメリカが景気後退期に入ればすぐにそのあおりを受けて日本も不況の状況に追い込まれるでしょう。
マクロ経済学の世界で有名なフィリップ曲線というものがあります。これはインフレ率と失業率の関係を表したものです。インフレの状況だと企業は現金を持っていると価値に減産リスクがあるため設備投資や新規事業に投資するようになり,結果として雇用が生まれて失業率が下がるというものです。確かにインフレ率が高いほど失業率が下がっていることが分かります。
インフレはどうしたら起きるのか?
ではどうしたらインフレが起きるのでしょうか。マクロ経済学的には貨幣量論説というのがあり流通現金量を増価させればインフレが起こりとなっています。単純な理解としては物の量があまり変わらないとした場合お金がたくさんあれば相対的にお金の価値が下がるのでインフレが進むと理解できます。
こういった背景から日本銀行はお金をじゃんじゃん刷っていて2013年は147兆円だったマネタリーベースは2018年には483兆円と3倍以上になっています。しかし,まだ日本では思うようにインフレが進んでおらず大きな課題となっています。長くデフレだった日本ではすぐに効果が見えてこない可能性もあり今後のインフレ率の動向に注目する必要があります。
少し回りくどかったですが,マクロ経済学的には人の命ですらお金で救える可能性があることが分かりました。
①マネタリーベースを増やしてインフレ率を上げる
②インフレ率が上がればフィリップス曲線に従えば失業率も低下する
③失業率が低下すれば自殺率が低下する
という流れです。日本の場合①の時点でつまづいているわけですが,「人の命をお金で買えるか」みたいな究極の質問になんらかしらの答えが出せる経済学というのは非常に面白い分野だと思っています。数式もそんなに難しいものは使っていないので,経済学を中学か高校で理系文系問わずに教えるようになればいいのにと思います。私自身そのくらいの時期に経済学を学ぶ機会があれば非常に意義深かったなと思います。
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