【比較宗教的考察】日本人が投資・寄付をしない理由

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日本人が投資をしない理由

日本人はよく投資しないと言われます。実際していません。金融庁は頑張って投資を普及しようとNISA制度を作りましたが,それでも思ったような成果は出ず,枕詞として「積立」という日本人が好みそうなワードをつけることで普及を図ろうとしています。

この日本人が投資しないというのは摩訶不思議でありいろいろな人が考察を試みています。例えば、「日本人」、「投資」、「しない」、「理由」でgoogle検索したところ実に42,600,000件もヒットします。日本の代名詞である「富士山」で検索すると60,000,000件ヒットされており,ほとんど変わらない検索ヒット件数となっています。前者は4語複合ワードであことを考えるといかに日本人が投資をしない理由についてみんなが知りたがっているかがうかがえます。

なぜアメリカ人は投資をするのか

日本人が投資をしない理由から考えると多くの人が迷走していることが検索結果からうかがえました。このブログでは逆説的に「なぜアメリカ人は投資をするのか」という視点で考えてみたいと思います。

19世紀のドイツの政治・経済学者のマックス・ウェーバーという人の著書に「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」という本があります。質素倹約を旨とするキリスト教を信じる西欧からなぜ資本主義が生まれたのかということについて考察した良著になります。

彼の考察によると西欧で資本主義が生まれたのは以下のプロセスによるためということです。そこから株式投資、寄付が発生するスキームとしては以下のようになります。なかなか複雑な内容なので後でそれぞれ詳しく説明します。

① 質素倹約を是とするカトリック教が支配的、教会の腐敗が進む

② カトリックのアンチテーゼとしてプロテスタントが発生

③ プロテスタントは天職という概念を創造

④ 富の蓄積、成長、再分配により資本主義が発生!

⑤ お金持ち=成功=神の救済チケットGETという考え方が主流に

どういうことか詳細を説明します。

カトリックが支配する時代

大昔のキリスト教はカトリックが主流でした。当時のカトリックは質素倹約がモットーであり,教会にこもってひたすらお祈りをささげることが推奨されていました。これでは全然経済発展しません。また,キリスト教のモットーは「神の救済」です。神の救済にあずかれる人は死後天国に行けるし,あずかれない人は地獄へ落ちます。そのためキリスト教の信者にとっては神の救済が現世で得られるかどうかがもっとも重要なことになります。

当時は,神の救済を得るには教会を介する方法しかなく,そのため信者は教会への絶対服従が必須でした。結果として,無双状態の教会は腐敗していき教科書でもおなじみの「免罪符」を売って暴利をむさぼっていたわけです。

そしてプロテスタントが登場

そんな教会の暴挙に対抗する形でルター等のピューリタンと呼ばれる人たちが,プロテスタントを起こしました。彼らは「神の救済」の決定権を持っているのは教会ではなく,聖書こそが優先度No1だと主張しました。聖書に記載されている中でも特に「隣人愛」を重視します。その際に,「天職」という考え方もその時に生まれました。
隣人愛と言うのはとてもあいまいなため具体的にどういうことかというのを説明するために転職という概念が生まれました。つまり,「天職」=「神から与えられた最適な仕事」を通じて人々に貢献することが「隣人愛すること」ととらえられました。また,一生懸命転職に励むことにより結果として富が蓄積されるので,

富が蓄積している人=天職を通じて隣人愛している人=死後神の国に行ける人

という図式が成立します。

また,当時は富を蓄積するということは必ずしも一般的ではありませんでした。当座の生活費を稼ぐことができればそれ以上は労働しないというのがいわゆる普通の生活スタイルでした。しかし,天職を通じて富の蓄積をすることが神の御意志に沿うという発想を生み出したことでどんどん働いて富を蓄積することが一般化し定着しました。

どんどん働いて富を蓄積することとはまさに資本主義になります。

資本主義の爆誕です。さらに,スーパー敬虔なキリスト教信者は蓄積した富を寄付により貧者に分配するという究極の隣人愛を実行します。ここまですれば神の救済はほとんど確実のものでしょう。一応教義上は,ある人が神の救済を得ているかどうかは最後の審判の日まで分からないとされていますが,神の救済を得る人と言うのは当然現世において神の御意志に沿った行動をとった人です。神の御意志と言うのは聖書の中で記載されており隣人愛を実践した人というふうになっていますので,この概念をもってすれば審判の日を待たずに自分が天国に行けるかどうかを判定できるわけです。いわば,自己採点みたいなもんです。図であらわすと下図のようになります。

現世にいながら自分が救済されているかを判断できるというのは非常に画期的です。このような理由からアメリカ人は投資および寄付が盛んなのでしょう。それだけではないかもしれませんが思想的側面で金儲けを推奨しているというのは大きな理由となりうるでしょう。

日本人はなぜ投資をしないのか

アメリカ人は宗教的背景からお金持ちになることが重要という素地ができています。しかしわれらが日本はそのような文化背景はありません。飛鳥時代の「和を持って貴しとなす」ではむしろ金儲け第一だったら周りともめるでしょうし,江戸時代の「士農工商」も一番お金儲けられそうな商人は一番下の身分です。現在においてもいい大学を出ていい会社に入り一生サラリーマンとして過ごすというライフスタイルが推奨されており,大多数のその他大勢でいることが推奨されています。
ホリエモンのようにその才能で億万長者になった人をテレビとかで持ち上げたりはしていますが,出る杭は打つ文化の日本では彼が逮捕されてすべてを失ったら「飯ウマ」とか言っているわけです。こういう文化背景の違いから日本では投資が進まないのだと思います。

まとめ

「なぜ日本人は投資をしないのか」という永遠の疑問について,「なぜアメリカ人は投資をするのか」という観点で考えてみました。今回内容を引用したマックス・ウェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」は内容は結構難解ですが,質素倹約を旨とするキリスト教からお金儲け推奨の資本主義が生まれた背景を論理的に述べていて,非常におもしろくおすすめの本です。また,個人投資家の皆さんは常日頃善意で周りに投資をすすめていると思います。またほとんど全員が結局投資をしなくてなんでやねん!と憤りを感じた経験があると思います。そんな時はこの本を読めば少しは怒りが収まるかもしれませんよ。

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何かと話題のトルコリラですが,騒いでいるのを見るのはネットかニュースのみでした。そもそも日本人は投資をしないので母数が低いうえに私は知り合い...


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