【化学的解説】アスベストとは何か?【JNJ株価暴落を受けて】

ベビーパウダーの原料タルクに含まれるアスベストを精度よく分析することは困難

ジョンソンエンドジョンソン【JNJ】の株価が暴落しています。理由は「同社のベビーパウダーの原料であるタルクにアスベストが混入しているのではないか」、「同社は以前からそれを知っていたのに隠していたのではないか」という報道があったためです。ジョンソンアンドジョンソン側はそれを完全に否定しています。同社はディフェンシブ銘柄としてポートフォリオに組み入れている人も多いと思います。私はまだ保有していないですが、将来的には欲しい銘柄です。マスコミや法廷とジョンソンエンドジョンソンの主張は完全に食い違っておりアスベスト問題は長引きそうです。とはいえアスベストというのは名前は聞いたことがあるもののあまり詳しくないのでそもそもなんなのかについて今後法廷などで焦点になりそうなポイントについてまとめてみました。ちなみに結論から言うと化学的な視点でいうとベビーパウダー中のアスベストの分析精度が今回の重要なポイントの一つになるのではと思っています。

そもそもタルクって?アスベストとは何?

今回の騒動はジョンソンエンドジョンソンのベビーパウダーの原料に使用しているタルクにアスベストが混入していたかどうかということが問題です。タルクというのは日本語で滑石といい、水酸化マグネシウムとケイ酸塩からなる鉱物です。ものすごい大まかなくくりでいうとただの石です。地殻中に含まれる元素のうち酸素を除くとケイ素は第1位、マグネシウムは第7位です。どちらも非常にありふれた物質でそれ自体に害はありません。今回含まれていると報道されているアスベストはトレモライトという成分で元素としては滑石に含まれているのと大差ありません。じゃあなんで体に有害なのかというと構造が問題です。アスベストは細い繊維状の形態をしています。それを長期間吸引すると生体組織を気付つけガン化するというものです。アスベストが癌の因果関係になるというのは広く認められていることなのでそこは争点にはなっていません。

今後の焦点となりそうなポイント

アスベストの分析方法としては大きく分けて,①顕微鏡による観察、②X線による構造解析の二種類の方法があります。①は比較的イメージしやすいと思います。顕微鏡で観察して繊維状の成分がないか確認する方法です。この方法は直感的に分かりやすいですが,欠点としてはどうしても全部の領域を確認することは不可能ということです。例えるならをウォーリーを探せ見たいな感じです。ウォーリーを探せなら1ページにいるのは1人と決まっているのでいいですが,アスベストの場合いるかいないか分からない。局所的にたくさんいるかもしれない。という状況なのでどのくらいいるのか完璧に分析するのは困難です。どうしても何らかの統計的な処理によって0.1%以下の濃度である可能性は99%以上みたいな担保の仕方しかできません。ちなみに国際的な基準のISOでは顕微鏡で確認する方法をとっておりおそらくJNJもこの方法で検査しているのだと推測されます。

もう一つの②X線による構造解析です。この方法は試料にX線を照射し反射したX線のパターンを解析して試料の構造を分析する方法です。この方法も問題がいくつかありまして,分析のために試料を粉末状にする必要があります。その過程でアスベストが壊れてしまう可能性があります。また,この分析方法はあまり低い濃度の分析に適している方法ではないので今回のように0.1%以下の濃度が議論になっている場合どこまで精度高い分析ができるか疑問です。

どちらの方法も国際規格(ISO)や日本の企画(JIS)等で方法が定められており一応微量のアスベストも分析できるとなっていますが,どちらの分析方法も使用したことがある私の個人的な意見では微量のアスベストを簡易に再現性・制度よく分析するのは困難だと思います。特にジョンソンエンドジョンソンは「アスベストは全く(0%の意味?)含まれていない」みたいなニュアンスでしゃべっていますが,上記の2つの方法ではある基準値以下ということは言えても全く含まれていないということは絶対に証明できません。測定の回数をなるべく多くすれば精度は高まりますが100%ではないです。化学の世界では「絶対に(100% or 0%)」と言い切るのはとってもリスキーです。なぜならそうではない結果が1回でも出たら直ちに反証明されてしまうからです。そしてどのような分析であれ100%だと証明することはできません。特に今回の分析方法だとより難しいと思います。もしも,ジョンソンエンドジョンソンが使用しているタルク中にアスベストが少しでも含まれているということが今後何らかの方法で明らかになった場合同社の株価への影響は結構大きくなるのかなと思っています。また,現状の0.1wt%以下という基準値以下ということについても過去の製品について再分析を何度もしたらかなり高い確率で越えてくるロットがあるのではないかと疑わしく思います。

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