日本企業で品質問題が起きる原因

スポンサーリンク
スポンサーリンク

最近自動車メーカー等で検査結果の書き換えや無資格者が検査を実施していたという問題が多発しています。会社のトップは「現場の品質意識が低下していた」、「一方で管理の方法についても甘かったのでこれから是正していきたい」などと言っています。自らの責任・具体的な改善策についてはごまかしながら,悪いのは一般社員のせいにする。典型的な日本企業のやり口です。この問題,本当に改善しようと思えばすぐできます。組織構造を変えればいいのです。

普通の会社の組織構造

細かい構造は違うでしょうが,大体大手企業は取締役会を頂点とし,各事業部,各部署と枝分かれした組織構造になっています。製造に対して責任を持つ製造部門と品質に対して責任を持つ品質部門という組織の両方を各事業部の長が取りまとめています。製造部門は生産量を上げるためアクセルの部署、品質部門は一定の品質以上を守らせるという意味でブレーキの部署と言ういわば相反する役割を担う部署を同じ統括者が管理しています。

各事業部の長は「一定の品質を維持した製品を」、「生産計画通りに生産する」という責任を負っています。しかし,品質と生産は両立が大変困難です。特に,最近景気が順調なので製造設備はフル稼働であることが予想されます。生産計画をあくまで守ろうとしたら少しの不適合率の増加でもダメです。

よく安全第一という言葉がありますが,この言葉は続きがあります。

安全第一、品質第二、生産第三というのが全部です。要はこれらは同時に完璧にするのは困難なので優先順位をつけているのです。今回のケースは本来は安全の次に優先すべき品質を次点の生産を優先してしまったという問題です。

もしも不適合が起きたら

こんな組織図の組織で不適合が起きたらどうなるでしょう? 例えば,「法的基準を著しく超えてしまっている」、「安全面に大きな危険性がある」といった重大な欠陥でしたらさすがに生産を停止し品質を改善すると思います。しかし,「法的基準はOKだが社内基準にはわずかに到達していない」、「無資格者のデータだけどデータは適合している」といった,今回のような場合どうでしょうか? 日本人は(悪い意味で)空気を読む文化です。「実質的に問題ないのならいいか。」と空気を読んでしまっても不思議ではないと思われます。今回どのレベルの段階で「空気を読む行動」が行われていたのか不明ですが,(担当者レベル、部門長レベル、事業部長レベル)いずれかの段階で空気読む文化>チェック機能と重要性が逆転してしまったためこのような問題の頻出につながっていると私は考えます。

また,問題の本質は以下の3点と私は考えます。

日本人は空気を読む文化であり,往々にして空気を優先してしまうという悪癖がある

生産と品質のどちらを優先するのか組織として明確でない

事業を統括する部門長は生産と品質の両方の責任を負っている

①に関しては日本人の本質的な性質なので改善は不可能です。(少なくとも一企業には)

あえて改善策を出すとしたら,日本人的な空気を読む文化を持たない移民を大量に受け入れるとかでしょうか。とくに大企業の場合,その社員は幼少期から空気を読むことを植え付けられた空気を読むプロです。子供のころから言われた通り勉強し,教室では静かにして,最大の空気読む文化である就活と言う活動を潜り抜けた「空気読みプロ集団」です。彼ら「空気読みプロ集団」に空気読むなと言っても無理です。逆説的にいうと空気を読まないのを正とする組織文化(空気)を構築できれば空気読まないようになるかもしれませんが。なんかややこしい話です。

しかし,②と③については改善できます。むしろ②をするために③をすべきと思います。さきほどの組織構造をこういう風にすればよいのです。

品質保証部門を各事業部から切り離し,取締会直轄とし,「生産」と「品質」という責任を切り離すのです。そうすれば,「生産」というアクセルは各事業部が,「品質」というブレーキは品質保証部門が責任者となります。違うベクトルの仕事を一つにまとめるから空気読みの悪癖が生じるのであり,ベクトルごとにわけてあげれば空気読みの悪癖は低減できると思います。各部門の品質担当はすでにいるので,人員の増加等は不要であり,コストもほとんどかからないでしょう。ただ,組織図を変えて,担当役員を1つ増やせばいいだけです。別にこの方法でなくてもいいですが,どの会社も具体的な改善策は示さず記者会見に出てきて「現場の品質意識が低下していた」、「一方で管理の方法についても甘かったのでこれから是正していきたい」などと言って適当に時間稼ぎしているのは本当に腹立たしいです。最初に起きた神戸製鋼の場合を除き,株価にもほとんど影響しないし,記者会見であやまっておけば済むと考えているのが見え見えです。

私は常日頃から日本の企業、組織の「本質的改善をしないでうやむやにする」体質に憤りを感じており,こういうことの積み重ねで日本企業の価値が毀損しているのだと本気で思っています。もうこういったことはお家芸のような気もするのであきらめてもいますが,少なくとも私が会社員でいるうちは頑張っていこうと思います。


米国株ランキング

にほんブログ村 株ブログ 米国株へ
にほんブログ村

関連広告

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする