【イデオロギーの違い】日本企業が株主還元を軽視する理由

日本企業は欧米の企業と比較して株主還元の意識が低いです。容易に減配するし自社株買いにも消極的です。

例えば,日本たばこ産業は2018年の決算結果を受けて,2015年から少なくとも年間10円の増配してきた増配額を4円に縮小する配当方針の変更を発表しました。
また,25年以上増配している株は米国株ではたくさんありますが,日本株では花王のみです。

JTを純利益4%減で配当金の増額を60%減らす 日本たばこ産業(JT)は2019年12月期の決算発表で,連結の純利益が前期比4%減の3,7...

ここまで明らかな違いがあるのは業績がどうのこうのとか言った理由とは別になにかあるのではないかとずっと思っていたのですが,この間,弊社の取締役の方を含めた飲み会があってそこで理由の一端が分かるような出来事がありました。

株式会社の成り立ち

本題の前に必要なことなので株式会社の成り立ちについて言及しておきます。世界で最初に生まれた株式会社は有名で教科書にも載っている東インド会社です。1,602年に設立されました。日本で江戸幕府が開かれたのが1,603年ですから,非常に古い歴史を持っています。

当時,航海に出ることは大きなビジネスを開拓できる可能性があった事業でしたが,それと同時に船員の雇用や船の生産費などの必要なコストも高く,また遭難や略奪などのリスクも非常に大きいものでした。また,もちろん航海を行っても何の成果も得られないこともありました。

そこで多くの出資者を募り,その出資の単位に応じて、航海の後に利益を分配するという方法を考えました。この出資こそが現在の株式の原型となっています。その後,東インド会社は200年に渡り利益を出し続け,株式会社という組織体はヨーロッパ中に広がっていくことになります。19世紀には産業革命が起こり,株式による出資を募り事業を拡大する業者が相次いで生まれていきました。

そもそもの株式会社の歴史から考えると,リスクを分散して全員の平均的なリターンを最大化しようというのが株式会社であり,増配や自己株買いなどで株主に報いるのは当然であると言えます。

飲み会での取締役の発言

冒頭の話に戻りますが,先日取締役(社内No.5くらいの人)を含めた飲み会がありました。私は平社員もいいところなので基本的に偉い人の話を聞いて相槌を打つだけです。その方はものすごい細かい人で部下にとことんまで仕事をさせますし実際自分でも色々細かいところまで考えて意思決定をする人です。細かすぎて本質から外れてしまうことも多いし,とにかく細かいのであまり周りからは好かれてはいないのですが,細かさと猛烈ぶりが評価されて今の地位にあると思われます。以前からいったい何がこの人をここまで仕事に駆り立てているのかは非常に興味がありました。

さて,宴もたけなわになり仕事論の話になりました。その取締役の人が何を重視して仕事しているのかについて語り始めました。弊社はだいぶ前に早期退職(いわゆるリストラ)を募集していたことがあり実際何人もの人が会社を辞めたことがあるのですがその当時課長だった彼はその時部下のクビを切ることがとても嫌でとくに地元雇用の人のクビを切るのが嫌だったそうです。

「君たち(私のような大学卒)は別に就職先があるからいいけど,地元雇用の方々は40、50歳でクビになったら生活が立ち行かないから非常につらかった。それが今部下に厳しく仕事をさせてている原点にある。」みたいなことを言っていました。

人としてはとても素晴らしいことを言っていると思いますが,私はちょっと承服しかねました。(もちろん反論なんかしないけど)。弊社は株式会社なので株式会社の成り立ちに鑑みると不要な人材をリストラすることはむしろいいことのはずです。実際弊社の社是にも株主に報いるという文言が大上段に構えられています。例えば,その方が大株主なのであれば彼=大株主の期待に沿うのでそういった経営をしてもいいと思いますが,多分彼は取締役といえどほとんど自社株を持っていないはずです。

もちろん地元雇用を守るのは社会的には非常に意義深いことであることと地元雇用を守りたいという人情的な部分については完全に同意します。でもなんか根底の考え方の部分で非常に疑問に思いました。少なくとも彼のイデオロギーは株主にとっては何の利益にもなりません。

日本で初めて生まれた株式会社は明治6年に誕生した第一国立銀行です。明治維新の際にできたのですね。必要だから株式会社ができたのではなく欧米の方式を取り入れる上で株式会社ができた感じです。

欧米:株主の利益を最大化する必要あり⇒その手段として株式会社が成立
日本:欧米に追い付け追い越せ⇒株式会社設立したろ!

歴史的に株主に報いることから始まった欧米と欧米の方式を取り入れることがそもそもの目的で株式会社が成立した日本ではこういう原点の部分で違うのかなと思いました。結局地元雇用を重視するようなイデオロギーの人が配当金の額とか方針を決めているので日本は株主還元の意識が低い(というかそもそも意識低いことを問題視していない)のかなと思う経験になりました。逆に言うと日本企業はいわゆる普通の人が働くには非常にいい(リストラされない)環境なのかなと思います。

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