欧米以外で資本主義は本質的に成立するのか

株式投資は欧米以外の国も報われるのか

ジェレミー・シーゲル著「株式投資の未来」によると1900年から2003年という長期スパンで見た場合,米国だけでなくほかの国でも債権よりも株式投資のほうがリターンが高いという結果が出ています。同書のグラフを見ると日本も平均年率4%となっており,同6.5%のアメリカには及ばないもののなかなかいい勝負をしています。しかし,両者の株価推移の形は大きく異なっており,下図を一目見てわかる通り米国は基本的に右肩上がりなのに対して,日本はバブル崩壊後もみもみの展開が続きます。さらに,日経平均のグラフは10進法メモリなのに対してDOW平均は対数目盛で表しているので差は何倍、何10倍も大きいです。今後もこういう感じの推移をするのであれば,日本株は債券よりはリターンが高かったとしても投資先としては微妙でしょう。そして,将来のことは分かりませんがもみもみの展開になる可能性は結構高いかもしれません。

なぜもみもみの展開になっているのか考えてみた場合,そもそも本当の意味での資本主義というのはアメリカ以外では成立しないからではないか?という仮説に行きつきました。今日はそれについて述べたいと思います。

資本主義の原点はキリスト教

ドイツの政治・経済学者のマックスウェーバーによると現代資本主義の基礎的な思考方法を生み出したのはキリスト教。さらに言うとプロテスタントがその基本的な精神となっていると述べてられています。キリスト教の教義では死後の救済(神の国へ行けるか)を得られるかどうかというのが大事でそのために信仰を厚くすることが重要視されます。プロテスタントは天職(いわゆる個々人の仕事)を通じて世の中により貢献できた物が神の国に近いという発想をします。天職がうまくいっているかの分かりやすい尺度はいくらお金を稼げたかどうかです。より多くのお金を稼げたということはそれだけ社会に対して価値を提供できたと考えるので社会貢献しているととらえられるのです。

現代社会で宗教を本当の意味で信じている人なんて少数派だと思うかもしれませんが,社会学者の橋爪大三郎氏によると今でもアメリカ人は神と神による救済をガチで信じていているそうです。氏が例として挙げているエピソードとして,一時全米でもっとも期待される若手経済学者に日本人の岩井克人さんという方がいるそうなのですが,ある日「お前はアウトだ」と言われてしまったそうです。「後のノーベル賞候補と言われていたのに脱落したね」とも。岩井さんが間違ったことを発表したとか不祥事を起こしたとかいうわけではなく論文にマルクスを引用したのがまずかったそうです。マルクスはあからさまな無神論者なのでキリスト教社会のアメリカでマルクスを語ることはタブーとされています。経済学というバリバリのインテリの社会でもキリスト教に準じた行動が求められているといういい例です。

資産1兆円を目指さない日本

天職という発想もありアメリカ人は資産1兆円を超えてもまだまだバリバリと働くのです。一方で我々日本人がお金を儲ける理由としては有名になりたいとか楽な暮らしをしたいとかどちらかというと現実的な発想であることが多いと思います。自分、もしくは親族で使うことを想定しているので自分たちで使える額を超えた目標を掲げる人は見かけません。例えばアメリカであれば資産1兆円を超える人はたくさんいますが,日本人では柳井正氏と孫さんしかいません。

そもそも日本企業の経営計画書を見ていても,営業利益がどうとかとは別に社員を大事にします。とか環境に配慮します。とか社会の健全な発展に貢献しますとかいう多くの副次的な目標が多数見られます。一方で,アメリカの決算書は結構シンプルでEPSは〇〇円にします。とかROEは〇〇%にします。とか配当金は〇〇円にします。とか金関連のガチな数字が淡々と並んでいることが多いです。どちらの決裁書が正しいかは別として副次的な目標を抱えている日本よりお金に目標を絞っているアメリカのほうがお金は儲けられそうです。日本がたくさんの目標を掲げることになっているのは日本はよく言われるように村社会であり,みんなの和を重要視するためどこからも文句が出ないような目標設定になっているためと推測されます。決裁書一つとっても文化的に違いがあるのは面白いことです。

同じことはほかの国にも言えて,例えば中国では「中華思想」や「儒教」という独自の宗教的な行動規範があります。そもそも中国は多民族国家であり,国家を一つにまとめることが最大の目標のためその時点でお金儲けが第一ではない。さらに古来からの思想体系が複雑に絡まりあって現代の社会を作っているので,やはりアメリカのような資本主義が成立するかどうかは疑わしい。そもそも共産党は資本主義を否定しています。

韓国でも中国や日本などの外敵から度々侵略されてきた歴史があるので,国家の防衛というのがプライオリティ高い要素になっている。お金儲けの観点では日本とも中国とも仲良くした方が絶対いいのにそうしないのはそういう複雑な文化的・歴史的背景があるためだと思われます。

資本主義が示した明確なメリット

とはいえ資本主義がここまで受け入れられている背景にはこのシステムを採用してアメリカを模倣することで以下の明確なメリットを享受することができるからだと思います

水道、電気等のインフラがものすごい整備される
医療技術が発展し乳幼児死亡率が激減、平均寿命が爆伸びする
政治システムが安定し治安が比較的安定する

このようなメリットは歴史、宗教的背景が異なっても少なくとも庶民には広く受け入れられることでしょう。そのため,上記のようなシステムがまだ構築されていない国では爆発的に資本主義社会が進行し結果として経済的にも爆伸びする可能性は大きいと思います。VTなどの全世界型投資信託に投資するメリットはここにあると思います。しかし一方,これらのインフラが整理整頓されたのちにさらに資本主義的な思想で経済成長を全ての国が追い求める(追い求めることが能力的に可能か)と言われたらNOだと思います。理由はこれまで述べてきたように国によって文化的・宗教的背景が異なるからです。米国以外の企業に投資する場合はその国の文化・宗教的背景についても調べてみても面白いかもしれません。

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