サウジアラムコがIPOで256億ドルを調達。世界一の時価総額企業の誕生。

サウジアラムコの時価総額は1兆7000億ドルでアップル越えで世界一位

サウジアラビアの国営石油会社のサウジアラムコがIPOの公開価格を決定したと発表しました。公開価格は32リアルで合計調達額は256億ドル，（3兆円弱）となる見通しです。これは, 史上最大のIPO調達額となる見込みとなっています。

時価総額についてもIPOの価格ベースで計算すると，1兆7,000億ドルとなり，アップルの1兆1,000億ドルを6,000億ドルも抜いて世界最大の企業となる見込みです。もともと企業価値を「2兆ドル以上」と主張していたムハンマド皇太子のもくろみ通りとはなりませんでしたが，せいぜい1兆ドル程度ではないかという下馬評もあった中でのこの価格であれば十分でしょう。

公開価格が思うように上がらなかった背景には米中貿易戦争での原油の需要の低迷にあります。OPEC（石油輸出国機構）やロシアなどの主要原油国は先日，協調減産の強化を決定しました。2019年9月には最大の石油需要国であるアメリカが石油の純輸出国になったこともあり，しばらくはエネルギー銘柄の株価は不安定となる恐れがあります。

今回のIPOの株式の割合はわずか1.5%，今後の日本市場への上場に期待

今回サウジアラムコがIPOで上場するのは30億株で，これはサウジアラムコの全株式2,000億株のわずか1.5%でしかありません。残りの，98.5%は依然としてサウジアラビア政府が保有しているままです。また，今回公開されるのもサウジ国内やUAEなど周辺国向けのみで海外投資家は購入が困難です。一方，もともとサウジアラムコは海外市場を中心に発行済み株式の5%の公開を目標としており，地政学的なリスクから，リスクのあるニュヨーク市場ではなく，日本市場へ上場するという可能性も依然残っています。といのも，もともとは米国市場に上場を検討していたそうですが，オバマ政権時代に成立した「テロ支援者制裁法（JASTA法）」が成立したことにより，2001年の米同時テロの遺族らにサウジ政府に損害賠償を請求される可能性があり訴訟リスクのため，ニュヨーク市場への上場は見送られる可能性が高くなっています。もし，日本市場に上場となったら非常に楽しみなことです。というのも，時価総額もさることながら，サウジアラムコの純利益はすさまじく，1,111億ドルもあります。約12兆円で，スウェーデンの国家予算12兆円，東京都の年間予算額13兆円とほぼ同額となっています。他の石油メジャーで勝てる企業がないのは当然として，AppleもGoogleも勝てずエクソンモービル、アップル、アルファベットの3社の純利益を足してようやく同等となるレベルです。

そして，政府企業が支配的な株主であるために，利益の株主還元もすごいです。同社のIRによると2018年の支払い配当金は580億ドルで日本トップ企業であるトヨタの営業利益の2倍もあります。2018年の配当ベース，時価総額が今回予定されている1兆7,000億ドルで概算すると，期待される配当利回りは3.4％で配当利回りはエクソンモービル程度と概算されます。日本市場に上場された場合は，配当に掛かる現地課税がないのでその分お得ですし，何より規模がとてつもないので，インカム投資家必見の銘柄と言えるでしょう。まだ，日本市場に上場すると決まったわけではないし，配当金の額も変わるかもしれないし，株価も変動するので皮算用でしかないのですが，インカム投資家にとっては非常に食指が伸びる，期待できる銘柄となる可能性があります。私は購入することが可能になったら必ず購入します。