企業と大学での研究職の違い【メリット・デメリット】

企業と大学では研究の意味合いが異なる

私は化学系の大学院を卒業後,某メーカーで研究職として働いています。日本は科学研究で何度もノーベル賞を取っている割には研究というのは何しているのか一般人には理解されていないと感じます。そもそも,研究職というのはどういうものかということと,大学での研究と企業での研究にはどのような違いがあるのかということについて紹介したいと思います。

そもそも研究職とは

研究職とは大学や企業で科学的な実験をしたりして新しい技術を開発したり,発展させたりする仕事です。科学系の大学・大学院を卒業した人の進路としては一般的なものの1つになります。おおざっぱに以下の3つにカテゴリーされます。この3つを基本として,製品・技術の数だけ様々な分野に派生しています。

基礎研究
研究室でひたすら研究するような仕事です。論文を読んで仮説を立てて,それを実験で実証するような仕事です。数年~10年後くらいに実用化されることを目指すくらいの文字通り基礎的なことを研究する仕事です。特に大学でやっている基礎研究ははっきり言って何の役に立つのか本人たちにも説明できないことをやっていることすらあります。とはいえ,そんな研究のうちから本人たちですら気づかなかったような大発見につながることもあるので意義深い分野です。大学がメインですが,企業でも一定の人員を割いて部門を持っていることが多いです。

応用研究
基礎研究よりは実用的な部門に近いです。すでに販売している製品の研究であったり,数年以内に販売することを前提とした研究をするのが応用研究になります。基礎研究に比べて学問というよりは実用的なことを実験することが多いです。応用研究は大学ではほとんどされておらず,されているとしても大学内ベンチャーチームであったり,企業とのコラボレーションであることが多いです。企業の研究部隊というと基本的には応用研究に何らかの形で携わっていることが多いです。

技術営業
技術的な知識を背景として技術者自ら顧客のところに行って要望を聴いたりして技術にフォードバックするような仕事です。応用研究の人から転じて技術営業になる人が多いです。技術知識だけでなく,コミュ力も要求されるのでこの部門の人は優秀な人が多く,出世することが多いです。技術営業に関しては大学にはおらず完全に企業専門の職業と言えるでしょう。

現在大学(院)生で将来は研究職になりたいと思っている人向けに,企業での研究職のメリットとデメリットをまとめたいと思います。

企業研究員のメリット①お金がもらえる

企業で研究職をするとお金がもらえるというのはやはり大きいです。大学で研究する場合,とても狭き門の助教授や講師などのポストを目指すか日本学術振興会の特別研究員(いわゆる学振)になるというのがお金を得るための一般的な手段です。大学の研究者も学振どちらも非常に優秀な研究員でなければ有資格者になれません。まだ学振であればいくつか論文を出せば有資格者になれる可能性がありますがそれでも月給20万円です。
ところが,企業の研究員であれば,初任給でも月給25万円くらいもらえるし残業代やボーナスもあります。また,ほとんどの企業で数年すれば大きく昇給するので,企業で研究職をするならば,大学で研究するよりも倍くらいもらえるお金が変わってきます。私も学振をもらうよりも3倍程度の給料がもらえています。

企業研究員のメリット②社会に実用される

大学で研究しているとはっきり言って何の役に立つのか分からないような研究だったりします。そのような研究であっても中には世の中を変えるような研究に発展したりするので必要ではあるのですが,何年も何に実用化されるのか本人にすら分からないことをするのは結構精神的にしんどいです。一方,企業の研究はすでに製品になっていたり近い将来製品化するものについて研究することが多いので意義を感じやすいです。自分が発見したことがダイレクトにインパクトを与えるというのは科学を学ぶ人にとっては非常にやりがいにつながる部分かと思います。

企業研究職のデメリット①上司が運しだい

大学でもそうかもしれませんが,企業だと上司に恵まれるかどうかというのは完全に運です。特に大学と違って数年に一回は人事異動が行われるので,良い上司に恵まれるかというのはガチャといっても過言ではありません。上司と言っても大抵複数人いるので,全員がまともな上司ということはほとんどなく,大抵キ〇ガイのような人が1人ないし複数人います。大学で研究する場合は基本的に上司(教授、准教授)は同じ人と継続してできるのでその点人間関係は楽だと思います。(もちろんその教授、准教授がやばい人だったら悲惨ですが)

企業研究職のデメリット②科学的におかしいこともまかり通ることがある

上司の運の話と被る部分もありますが,一番最悪なのは上司が科学的なセンスがない場合です。その場合,非科学的な妄想をもとに仕事を強要してきたり,結果ありきのことをさせられて真実を直視できないよう有形無形の圧力をかけられたりします。私自身現在絶賛その真っ最中です。科学者にとって,一番最悪なのは長時間労働でも,怒鳴りつけられることでもなく,科学的に不本意なことを言わされたりやらされたりすることです。大学の研究であれば,学会発表や論文発表である程度その分野に知見のある人の目があるので適当なことを言えませんが,企業内の研究というのはある意味閉じた空間での活動なのでいくらでも非科学的なことや手法がまかり通ります。極端な話大学の研究ではSTAP細胞があるようにするのは不可能ですが,企業ではSTAP細胞が存在するということにして話を進めることが可能だし,担当者がいくら不満に思ってもそういう風に話を進められてしまうことがあります。

非科学的なことでもまかり通ってしまうというのは企業で研究職をする上では致命的なデメリットだと思います。

まとめ

あまり世に知られていない研究職というものについてと,企業と大学での研究職の違いについてまとめました。現在学生で進路について迷っている人の参考になれば幸いです。

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